標本平均が従う分布を理解する|平均・分散の導出と統計的推測へのつながり

標本平均が従う分布のサムネ

平均 μμ、分散 σ2σ^2の正規分布からnn個とったとった標本平均が従う分布は、平均 μμ、分散 σ2n\displaystyle \frac{\sigma^2}{n} の正規分布ですよね。

標本平均が従う分布

これは、統計学を勉強していると非常に多くの場面で出てきますよね。

標本平均が従う分布を理解しておくと、 「なぜ区間推定の式がこの形になるのか」 「なぜ検定統計量がこの分布に従うのか」 といった疑問が自然に整理され、統計的推測の仕組みを“公式の暗記”ではなく“原理”として捉えられるようになります。

この記事を読むと、次のことがわかります。

  • 標本平均値が従う分布の考え方
  • 平均・分散の導出(証明)
  • サンプルサイズが増えると分布がどう変化するのか
  • 統計的仮説検定や推定とのつながり

なお、この内容は高校数学で学ぶ「正規分布」や「期待値と分散の性質」の知識があれば理解できるため、統計を初めて学ぶ人や、数学の基礎を確認しながら進めたい人にも取り組みやすいテーマです。

統計の基礎をしっかり理解したい人にとって、確かな土台になる重要な内容です。

統計検定・QC検定・データ分析の実務にも役立つ内容です。

目次

標本平均が従う分布

まずは、正規分布からサンプリングした標本で計算した標本平均は、正規分布に従うことを証明します。

確率変数が従う分布の平均は期待値と同じ意味なので、ここでは、確率分布の平均を期待値と表現します。

期待値E[X]E[X]μμ、分散V[X]V[X]σ2σ^2の正規母集団から、nnことった標本平均X\bar{X}は、母集団から最初にとるデータX1X_1からnn番目にとるデータXnX_nまでを全て足してnnで割って計算しますよね。

正規分布からnことった平均の計算

この時、母集団からどのデータがとられるかは決まっていないので、X1X_1からXnX_nは全て確率変数になります。

そして、その確率変数X1X_1からXnX_nが従う分布は、期待値 E[X]E[X]μμ、分散 V[X]V[X]σ2σ^2 の正規分布ですよね。

また、X1X_1からXnX_nが確率変数ということは、標本平均X\bar{X}は決まった値をとるわけではないということなので、X\bar{X}もまた確率変数ですね。

ここで、正規分布には『再生性』という性質があります。

正規分布の再生性とは、互いに独立な2つの確率変数が正規分布に従う時、確率変数の和は正規分布に従う」という性質です。

つまり、X1X_1X2X_2は独立なので、X1X_1X2X_2は正規分布に従い、X1X_1X2X_2X3X_3は独立なので、X1X_1X2X_2+X3X_3も正規分布に従います。

同じようにして、X1X_1からXnX_nまでを足した確率変数は正規分布に従います。

それをnnで割っただけの標本平均は、もちろん正規分布に従います。

では、期待値がいくつで分散がいくつの正規分布に従うのでしょうか?

次は、それを、期待値と分散の性質を使って求めてみましょう。

期待値と分散の性質

期待値と分散の性質の代表的なものはこれらですが、この中から、赤枠の4つを使えば、標本平均が従う分布の期待値と分散を求めることができます。

期待値と分散の性質

標本平均の期待値

まずは、標本平均X\bar{X}の期待値を考えてみましょう。

この2つの性質を使って、標本平均の期待値の式は、このように変換できます。

期待値の性質
標本平均が従う分布の期待値

ここで、X1X_1からXnX_nは、いずれも母集団から1ことった時の結果であり、母集団のいずれかの値をとる確率変数であるため、全て確率変数XXと等しいですよね。

よって、このように、標本平均の期待値は母集団の期待値と等しくなることが証明できました。

標本平均が従う分布の期待値

標本平均の分散

続いて、標本平均X\bar{X}の分散を考えてみましょう。

この2つの性質を使って、標本平均の分散の式は、このように変換できます。

分散の性質
標本平均が従う分布の分散の計算

ここで、X1X_1からXnX_nは、いずれも母集団から1ことった時の結果であり、母集団のいずれかの値をとる確率変数であるため、全て確率変数XXと等しいですよね。

よって、このように、標本平均の分散は母集団の分散÷nnとなることが証明できました。

標本平均が従う分布の分散の計算

標本平均が従う分布

ここで、最初に、母集団の期待値 E[X]E[X]μμ、分散 V[X]V[X]σ2σ^2と定義していたので、E[X]E[\bar{X}]μμV[X]V[\bar{X}]σ2n\displaystyle \frac{\sigma^2}{n} になります。

標本平均が従う分布

このように、標本平均は、期待値 μμ、分散 σ2n\displaystyle \frac{\sigma^2}{n} の正規分布に従う、ということが証明できました。

標本平均が従う分布の重要性

標本平均が従う分布がわかれば、標本をとった元の分布の、母平均の検定や母平均の区間推定ができます。

検定や区間推定に標本平均が従う分布が使用される例

母平均の検定を行う際には、標本平均が従う分布の平均と分散が必要ですよね。

母平均の区間推定を行う際には、標本平均が従う分布の分散が必要ですよね。

このように、母平均の検定や区間推定を行うためには、標本平均が従う分布がわかっている必要があります

だから、「平均 𝝁\boldsymbol{μ}、分散 𝝈2\boldsymbol{σ^2}の正規分布から𝒏\boldsymbol{n}個とったとった標本平均は、平均 𝝁\boldsymbol{μ}、分散 𝝈2𝒏\displaystyle \boldsymbol{\frac{\sigma^2}{n}} の正規分布に従う」というのは、統計学を勉強する上で、非常に重要なんです。

まとめ

この記事では、標本平均がどのような分布に従うのか、その性質と背景について整理しました。

  • サンプルサイズが増えるほど、標本平均は元の分布の母平均のまわりに集まりやすくなる
  • 標本平均が従う分布の期待値は、元の分布の母平均に一致する
  • 標本平均が従う分布の分散は、サンプルサイズが大きくなると小さくなる

標本平均が従う分布を理解しておくことは、統計的推測の仕組みを正しく捉えるうえで欠かせません。

この考え方がしっかりしていると、母平均の推定や各種の検定の原理が自然に理解でき、統計手法を表面的ではなく本質的に扱えるようになります。

この記事を書いた人

データサイエンスLab.

◆製造業で働くデータサイエンティスト
◆データサイエンス系YouTuber
◆QC検定1級ホルダー(成績上位合格)

統計学や機械学習などのデータサイエンス系の知識を発信しています。
初心者でもわかりやすく、かつ、本質の理解が促される解説が強みです。

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