モーメント母関数は、分布が持つさまざまな特徴を一度に扱える非常に便利な道具です。
しかし、名前も定義も少し抽象的なため、何をしているのかイメージしづらく、最初は少しとっつきにくく感じられるかもしれません。
この記事では、そんなモーメント母関数を、直感的かつ本質的に理解できるように解説しています。
モーメント母関数は大学レベルの確率・統計で登場しますが、本記事の理解に必要な数学的知識は「期待値」「微分」などの基礎が中心なので、初学者の方でも無理なく読み進めていただけます。
この記事を読むと次のことがわかります。
- モーメントとは何か
- モーメント母関数の定義と意味
- 微分によってモーメントが取り出せる理由
- 分布とモーメント母関数の関係
モーメントとは
統計や機械学習で確率分布を扱う際には、モーメントという概念がしばしば登場します。
モーメントとは、確率変数のべき乗の期待値のことです。
より正確には、これは原点まわりのモーメントと呼ばれます。

例えば、確率変数の1乗の期待値は原点まわりの1次モーメント、確率変数の2乗の期待値は原点まわりの2次モーメント、確率変数の3乗の期待値は原点まわりの3次モーメントといった具合です。
より一般的には、ある点a周りの次のモーメントは、このようになります。

モーメントは、分布の特徴を数値でとらえるのに役立ちます。
例えば、平均は1次モーメントそのものであり、分散は1次モーメントの2乗を2次モーメントから引くことで求められます。

このように、モーメントを使って平均や分散などの分布の特徴を示す統計量を計算できます。
モーメント母関数とは
モーメントは個別に計算することもできますが、すべてのモーメントをひとまとめに扱える便利な道具があります。
それが、モーメント母関数(moment generating function)です。
モーメント母関数は、ある確率変数に対してこのように定義されます。

モーメント母関数がどのように便利なのかと言うと、実はこれを回微分したものに =0を代入すると、確率変数を乗したものの期待値になるんです。
つまり、モーメント母関数を回微分して=0を代入すると、次のモーメントを求めることができるんです。

これを証明していきましょう。
唐突ですが、のマクローリン展開はこうですよね。

よって、をマクローリン展開するとこのようになります。

この式を使ってモーメント母関数の定義式を変形していきます。
はモーメント母関数の変数ですが、確率変数ではないので、期待値を求める計算では定数として扱います。
期待値の線形性から、このようになりますね。

これがモーメント母関数です。
これを使って、実際にモーメントを求めてみましょう。
モーメント母関数を、1回、2回、n回微分すると、こうなります。

これに、=0を代入すると、を含まない最初の項以外は全てゼロになります。

このように、モーメント母関数を回微分して、=0を代入することで、任意の次数のモーメントを取り出すことができることが証明できました。
色々な分布のモーメント母関数
主要な分布のモーメント母関数を見てみましょう。

一般に、確率密度関数とモーメント母関数は1対1に対応します。
つまり、モーメント母関数がわかれば分布が一意に決まります。
まとめ
この記事では、モーメントとモーメント母関数の考え方を解説しました。
- モーメントは確率変数のべき乗の期待値
- モーメント母関数はモーメントをまとめて扱うための関数
- 微分して=0を代入すると、任意の次数のモーメントが得られる
- 多くの確率分布でモーメント母関数が存在し、分布を一意に決めることができる

モーメント母関数は、分布の特徴を体系的に理解するための強力な道具です。
その仕組みを押さえておけば、確率分布の性質をより深く読み解けるようになるはずです。


